制作裏話

タッチタッチここにタッチ

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カワクボですこんにちわ!

社内で共通の物を使っていると誰のか良く分からなくなったりしてしまうので
自分のものに名前をつけているのですが、
普通に書いても面白くないなと思って顔文字っぽく書いてみたりしています。

さて、セラフも22話まで公開されて物語りもいよいよクライマックスへ!
ペインティングナイフやモデリングペーストで作業するのもクライマックス!

そう、皆さん感じていると思いますが、セラフでは荒廃した世界観を伝える為に
絵筆だけでなく、モデリングペーストやペインティングナイフを使用してマチエールを出しています。
詳しくは吉岡さんの記事でもご紹介しています。

PABLOスタッフ間ではこうしたテクスチャ的タッチを「セラフタッチ」と呼んでいます。
せっかくなので今回はセラフの画面を飾ってきた「セラフタッチ」の使用例をいくつか紹介したいと思います!
紹介する背景画は自分が描いたものです(^^)

■空気感を出すための使用例
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画面一番手前の青紫色の部分がペインティングナイフによるセラフタッチです。
ペインティングナイフは70年代頃のアニメ作品では質感表現としてしばしば使用されていましたが
セラフでは空間表現としても使用しています。
遠景がかすんで見づらくなっている時の表現だったり、距離感を分かりやすく伝えるための表現です。

上の画像は、画用紙が乾いている状態のときにペインティングナイフを入れたものです。
よく固い粒の表現が出るので、仕上げの際に抑えて馴染ませます。

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こちらは画用紙が濡れている状態のときにペインティングナイフを入れたもの。
絵の具も乾いてないので紙の上で混色して馴染みが良いです。
混色するので色数が多い時は不向きです。

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油絵でよく使われる豚筆を使用して、画用紙が乾いた後に描いたものです。窓外の木のうしろあたりです。
水彩用絵筆より固くペインティングナイフより細かい表現が出せます。


■質感表現(荒廃感)
地殻変動による世界の崩壊後、放置された8年分の汚れを表現するのにもうってつけです!
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固い剥き出しのコンクリートや

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砂埃のたまったざらざらとした地面と落ちている破片。

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散らばったガラスの破片やぽつぽつと錆付いた表現も
ペインティングナイフやモデリングペーストを使うと一気に雰囲気が増します。

汚れは絵筆でも描き加えていて、
このときは大体絵の具量も水分も抑えた掠れ気味のうす塗りをしています。
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描かれているものを触ると、「ザラザラ」「ガサガサ」と感じるようなタッチを使います。

■質感表現(ツヤ出し)
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こちらも油絵的な表現ですね。
キラッと光る金属の反射部分や、物の角っこの光が一際当たる場所にザラザラっとハイライトを入れます。
するとツヤツヤした印象の絵に仕上がります。
使うのは普段使っている水彩絵筆です。

普通は明るい色を置くだけですが、
セラフの場合水分量を最低限残した絵の具たっぷりの細い筆で塗ります。
個人的に、塗るときに「ぽてっ」とするような印象を持っていたので「ぽてタッチ」と呼んでいました。私のお気に入りのタッチです。
ですがこれ、絵筆に残す水分と絵の具量の比率が難しく、よく失敗します……。

こちら線だけではなく面にも使っています。
金属の反射以外にも、ライトの光る表現や面積の狭い明るい部分
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硬い素材でツヤ感のある壁に、丸筆を平たくして入れます。
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硬い質感のものだけでなく、柔らかい布など様々な場面で使えます。

他にも、画面の雰囲気作りとして何も無いところにあえてザラザラとしたタッチを載せたシーンも有りしました。
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一話の孤児院でのシーンです。
怖い雰囲気が出せたらなと、黒いブツブツとした縦筋を画面の隅に入れています。

改めて振り返って見ると、セラフはいろんなチャレンジがあった作品だったなと思います。
色や馴染み具合の表現に使う紙を変えてみたり、
タッチの大きさを出すために普段使うサイズの80%縮小状態で描いたり。
「触感」を使って描いたような作品でした。

こうした筆遣いともあと少しでお別れですが、
最後まで独特のタッチが引き出すセラフの世界をお楽しみください!